【逆転裁判】歴代ラスボスの強敵度評価

大人気ミステリーゲーム、「逆転裁判」シリーズ。犯人たちの嘘を暴き、真実を明らかにしていく快感がたまらないゲームシリーズです。

そんな気持ち良さを最も味わえるのが、各作品の最終話です。シリーズのお約束として、最終話には物語の裏で糸を引く、冷徹な大物悪役が登場。彼らを倒すのは困難を極めますが、無事にお縄に付けられた時のカタルシスは最高です。ラスボスは、その作品の面白さを決定づける、非常に重要なファクターだと言えます。

しかし、逆転裁判シリーズでは、ラスボスの大物感が今一つ安定しません。作品によっては、ぽっと出の小悪党がラスボスになってしまい、ラストが全く盛り上がらず肩透かしを食らうことも。

そこで、シリーズ歴代12作品のラスボスの強敵度を評価してみました。その評価項目に関してですが、ラスボスを強敵たらしめる要素は、複数挙げられます。

 

まず、ラスボスであるからには、犯罪のスケールは何にも置いて重要です。国中の人々の安全を脅かす大規模な犯罪を犯してこそ、ラスボスの器です。

次に、巨大犯罪を行う犯罪者としての心構えも重要。人を不幸にしても何とも思わない冷徹さを持った人物こそ、倒しがいのある敵役であると言えます。

更に、どれだけ悪事を犯そうと、すぐにお縄に付いては無意味。論戦の上手さや証拠隠滅といった法廷戦術を備えてこそ、ラスボスに相応しい人物です。

加えて、犯人の社会的な地位も、強敵としての重要な要素です。多くの手下を引き連れた権力者ほど、打ち倒せた時の達成感も大きいというもの。

そして、ラスボス本人とは関係ありませんが、ラストバトルの舞台も、ストーリーの盛り上がりには重要です。強敵との対決には、特別感ある戦いの場が不可欠です。

 

以上の「スケール」「冷徹さ」「法廷戦術」「地位」「舞台」の5つの項目について、各キャラクターを1点~5点で採点しました。その平均を、そのキャラの強敵度としました。そして、強敵度が2点以下のキャラはC、3点以下ならB、4点以下ならA、それ以上ならSとしてランク付けを行いました。

 

狩魔豪A

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初代「逆転裁判」のラスボス。

過去40年に渡って無敗を誇ってきた、初代最強の敵役です。しかし、その無敗記録は、証拠の捏造など不正な手段に裏打ちされたもの。加えて、弟子である御剣にまで不正を教え込むという徹底ぶり。これらにより多くの冤罪を生み、多数の人々の人生を狂わせた事でしょう。違法行為のスケールはなかなか大きめと言えます。

その上裁判では、真犯人を知っていながら、証拠の隠蔽により教え子の御剣に冤罪を着せようとします。身内切りをも厭わない、酷薄な姿勢です。論戦や工作のみならず、スタンガンで直接の武力行使をしてくるといった危険な一面も。「冷徹さ」の項目は満点間違いなしです。

このように、悪役として完成されすぎた狩魔検事。その後の作品では、なかなか彼に匹敵する強敵が登場しないことになります。

 

王都楼真悟:B

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 「逆転裁判2」のラスボス。

21歳の俳優。ライバル俳優「藤見野イサオ」を蹴落とすことに執着する人物です。作中での犯罪行為は、藤見野への盗聴、藤見野の結婚の妨害工作、殺し屋への藤見野の殺害依頼など。ラスボスとは思えない、個人的で影響範囲の狭い悪行です。

一応、残虐な性格に由来して、「冷徹さ」は高め。バックに付いている虎狼死家が有能であるため、最低限の「法廷戦術」も備わっています。とは言え、実際にプレイして、あまり倒しがいのあるラスボスだとは感じられませんでした。

開発陣は、狩魔豪を産み出したことで、アイデアを使い果たしてしまったのでしょうか。

 

美柳ちなみ&神乃木荘龍:B

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 「逆転裁判3」のラスボス。

この作品では、ラスボス的役割を2人が分担して担っています。「作中における一連の事件の黒幕」という役割は美柳ちなみ、「最終章の最後の対決相手」という役割は神乃木荘龍(ゴドー)です。

美柳ちなみは、殺人2件と殺人未遂3件を犯すという悪女です。その目的は、過去に起こした宝石強盗事件の口封じ。人をとことん利用しようとする残忍さは悪役の鑑です。一方、事件の動機は私怨や保身のためであり、ラスボスにしては悪事のスケールが小さめ。

神乃木荘龍は、優秀で良心ある検事です。作中では、真宵の命を守るため、美柳ちなみを霊媒した天龍斎エリスを殺すことになってしまいます。悪人というよりは正義漢であり、こちらもラスボスらしからぬ感じ。

いずれもラスボスとして倒しがいのあるキャラクターではなく、開発陣の迷走ぶりが伺えます。

 

巌徒海慈:A

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 「逆転裁判 蘇る逆転」の犯人。厳密にはあくまで「最後の章の犯人」なのですが、風格と威厳が完全に狩魔豪の再来であるため、ラスボス扱いとしました。

警察局の局長という地位の高さに加え、威圧感ある体格と不敵な口調が特徴。法律に堪能であることから法廷戦術にも長けており、敵として不足はありません。殺人2件を起こしている他、宝月巴を傀儡化して警察局・検事局双方を手中に収めようと企てており、野望のスケールも申し分ありません。総評として、狩魔豪以来の強敵然としたラスボスです。

この辺りから、開発陣が強敵ラスボスを産み出す取っ掛かりを掴み始めてきた様子が感じ取れます。

 

牙琉霧人B

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 「逆転裁判4」のラスボス。

証拠品捏造で判決を勝ち取ろうとする悪徳弁護士。逆恨みから或真敷ザックを殺害し、成歩堂龍一の弁護士バッジを剝奪し、更に証拠品贋作師である絵瀬土武六をも口封じで殺害。巨悪というよりは、成歩堂と個人的確執のある怨敵、といった立ち位置です。

また、刑務所の中に居ながら娑婆の人間を殺害する、という離れ業を披露してくれる奇術師でもあります。トリックの意外性という意味ではラスボスに相応しいと言えます。

 

カーネイジ・オンレッド:A

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逆転検事」のラスボス。

アレバスト王国日本大使館の全権大使であり、その正体は、作中一連の事件の元凶である国際密輸組織の首領。日本の検事審査会会長も、大企業グループである天野川コンツェルンの総裁も、ババル共和国の大使も、西鳳民国の大統領も、作中に登場する地位ある人物はことごとく彼の息が掛かっています。随所に影響力を発揮する、スケールの大きい巨悪です。

国境を利用して量刑を軽減しようとするなど、法学の知識を活かした駆け引きもわきまえた強敵です。ただ、最終決戦の舞台はトノサマンの公演会場。トノサマンの技名を間違えてお縄に付くという、脱力感ある最期を迎えます。最後の対決の話題に緊張感が欠けるため、「舞台」の評点は低めです。

総評としては、大組織の頭領の名に恥じぬ、手ごわい悪役と言えます。この辺りから、開発陣の中でのラスボス像が固まってきたかのような印象を受けます。

 

猿代草太:C

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逆転検事2」のラスボス。

 職業はサーカス団員。過去の事件で父親を亡くし(たと誤認し)ており、父親の仇(と思い込んでいる人物)を殺害するため、本作の一連の事件を画策しました。

残忍で攻撃性の高い性格をしており、過去作のラスボスである王都楼真悟を彷彿とさせる人間性です。一方で、事件の内容は個人的な敵討ちであり、スケールは極小。法律に関しても素人であり、ラスボスらしき法廷戦術も地位も兼ね備えていません。

どちらかと言うと、4話の犯人である一柳万才の方が、権力も風格も兼ね備えており、ラスボス然としています。万才と違う方向性を目指したからこそ、彼が小悪党的なラスボスになってしまったのでしょう。

 

リテラスタ・カタルーシア:S

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レイトン教授VS逆転裁判」のラスボス。

ラビリンスシティにおける世界の創造主であり、異名は「ストーリーテラー」。彼が手持ちの本に書き込んだ物語は全て現実になる、という絶対的な能力の持ち主です。終盤の対決時には、この本を使って騎士の甲冑を操り、レイトンを剣戟で追い詰めました。

ラビリンスシティの世界観の中に居る限り、法律も裁判制度も魔法も、全て彼の創造物。世界の裏側を知っている彼には、裁判でも敵う余地がありません。

最後の魔女裁判の舞台もファンタジックであり、対決に彩りを添えてくれます。但し、その正体は製薬会社の社長であり、娘想いな善人。悪意を持って行動している人物ではないため、「冷徹さ」は低めです。

人智を超える力を持ったラスボス」という逆転裁判史上では画期的なキャラであり、この方向性は特に逆転裁判6など、本編にも影響を与え始めます。

 

番轟三:B

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逆転裁判5」のラスボス。

表向きは所轄の刑事ですが、その正体は世界を股にかけるスパイであり、通称「亡霊」。夕神検事が有罪判決を受けた過去の事件の真犯人であり、幼少期の心音にトラウマを植え付け、また王泥喜の親友を殺害したという、主要人物と浅からぬ因縁を持つ仇敵です。

感情の起伏が極端に小さいらしく、本作における伝家の宝刀である「ココロスコープ」が通用しません。プレイヤー側の必殺技が効かないという点では、ある意味強敵です。

主要キャラの因縁の相手で、かつプレイヤー側の攻め手をトリックスター的に搔き乱す人物という点では、牙琉霧人タイプのラスボスです。

 

ルバート・クログレイ:C

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大逆転裁判」のラスボス。

大英帝国の優秀な電信技士。国家機密を敵国に流出させていた国賊であり、その犯罪の証拠を取り戻すために殺人に及びました。

ただ、物語中で彼が担うのは、「大逆転裁判2」に続く陰謀の前座的役割です。RPGで言えば、ラスボスというより単なる雑兵といった所です。

 

ガラン・シガタール・クライン:S

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逆転裁判6」のラスボス。

クライン王国の女王であり、国民からの崇拝を集める人物です。その絶対的権力を利用し、旗色が悪くなると裁判中に法律を改正するという、規格外のキャラクターです。作中では、議論で追い詰める度に法律を変更され、王泥喜成歩堂も手詰まりに追い込まれます。

また、「弁護罪」の制定により国内の弁護士を根絶やしにした張本人でもあります。これにより処刑された弁護士ほどれほどになるのでしょうか。多くの人々の人生を奪い、また国の司法を狂わせた、スケール最大級のラスボスです。

加えて、義娘レイファ、姉アマラ、甥ナユタらも彼女の毒牙に掛かり、命を狙われたり罪を着せられたりします。身内をも手駒として利用し尽くす冷淡さは、まさに悪役の中の悪役といった所。

裁判のルールすら手中に収める絶対的な強敵、という意味では、リテラスタ・カタルーシアに並ぶラスボスと言えます。

 

ハート・ヴォルテックス:S

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大逆転裁判2」のラスボス。

大英帝国の首席判事であり、ロンドンの司法界では最高の地位を持った人物。弁護士の任命権を持ち、成歩堂自身の留学認可も下ろせるという、ある意味主人公の生殺与奪を握る権力者です。

その裏では、大量の殺人を行ってきたという、冷酷非道な人物です。バロック・バンジークスの裁判で無罪になった被告人を残らず暗殺し、またプロフェッサー事件では自らの邪魔になる者たちを闇に葬ってきました。

一連の事件で、ヴォルテックスは自ら手を下さず、クリムト・バンジークスや慈獄政士郎といった手下を脅して殺人をさせてきました。また、その罪を亜双義玄真ら一般人に着せるなど、多くの冤罪と悲しみを産んだ人間でもあります。地位・冷徹さ・犯罪規模など、どれを取っても最高ランクのボスキャラです。

また、ラストバトルの舞台も、陪審員の排除された極秘裁判の法廷という、厳かな雰囲気が漂う空間。宿敵との戦いに相応しい、特別感ある舞台です。

 

まとめ

以上の評価をまとめると、次のようになります。

  • S:リテラスタ、ガラン、ヴォルテックス
  • A:狩魔、厳徒、カーネイジ
  • B:大都楼、ちなみ、ゴドー、牙琉、番
  • C:猿代、クログレイ

狩魔豪は、第1作のラスボスにして、完成され尽くした強敵でした。現代日本という範疇では、彼を越える敵を用意するのは難しいのでしょう。実際、続編以降のラスボスである大都楼、ゴドー、牙琉、亡霊などはトリッキー路線や人情路線に振った敵役でした。

狩魔豪以上のラスボスを用意するには、現代日本という世界観を飛び出す必要がありました。そこで製作陣が産み出したのが、外国・過去・異世界といった舞台設定です。これらの舞台における強敵が、ガラン、ヴォルテックス、リテラスタの3人です。この3人が、逆転裁判の世界における、歴代最強の巨悪と言えるでしょう。

逆転裁判シリーズは近年新作の兆しがありませんが、もし次回作があれば、今度はどんな強敵がプレイヤーの前に立ちはだかるのでしょうか。次の作品に期待が高まります。