ドラゴンポケモンのモチーフ分類

ドラゴンタイプと言えば、ポケモンの中でも非常に人気のあるタイプです。耐性も技範囲も優秀で、種族値も高くデザインも魅力的です。特に、伝説の生物をモチーフとしたそのデザインは、ロマンに溢れています。サラマンダーをモチーフにしたボーマンダや、ワイバーンをモチーフにしたオンバーンなど、いずれも実力と格好良さを兼ね備えたポケモンばかりです。

一方で、なぜドラゴンタイプなのかが良くわからないドラゴンポケモンが多いのも事実です。例えば、ガブリアスはサメなのにドラゴンタイプ。フライゴン(ウスバカゲロウ)、ヌメルゴン(カタツムリ)、チルタリス(鳥)なども何故かドラゴンタイプ。そして、ラティオスのような謎の生物までドラゴンに分類され始める始末。一体、開発陣は何を基準にドラゴンを付与しているのか、謎は深まるばかりです。

そこで、ドラゴンタイプの各ポケモンのモチーフを調査してみました。その結果、ポケモンがドラゴンに分類される判定基準として、大きく次の6パターンが存在すると判りました。以下で、順番に紹介していこうと思います。

 

パターン①:正統派ドラゴンがモチーフ

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一番分かりやすいのがこのパターン。ボーマンダは、その名の通りサラマンダーがモチーフです。同じく、オンバーンワイバーンがモチーフ。カイリューも、「エルマーとりゅう」に登場するような、一般的な西洋のドラゴンを元にしているようです。

 

 

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レックウザは、ゲルマン民族に伝わる伝説の竜「リンドブルム」がモチーフのようです。リンドブルムの特徴は、蛇のように細長い体躯と、手は有るものの足は無いというフォルム。両方とも、レックウザに当てはまる特徴です。

 

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バグガメスは、フランスに伝わる亀のような竜「タラスク」がモチーフでしょう。甲羅のトゲトゲが、まさにバクガメスと一致します。

 

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ジジーロンは、お爺さんのような顔の竜という、謎深いモンスター。恐らく、モチーフは中国に伝わる人面竜「燭陰」でしょう。山のふもとに棲むと伝えられ、ジジーロンの図鑑説明とも合致します。

 

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日本の絵画では、竜の首元には宝珠が描かれます。「竹取物語」でも、かぐや姫は五つの難題の一つとして、求婚者に「龍の頸の五色の玉」を要求しました。レジドラゴは、そういう宝珠がモチーフとなっているように見受けられます。

 

このような由来のポケモンは、ドラゴンタイプであることに割と納得感が持てます。なお、ポケモンの正式なモチーフは不明であり、あくまで名前や外見からの類推であることにご注意ください。

 

パターン②:空想上の爬虫類がモチーフ

正式な竜ではありませんが、神話上の蛇などの爬虫類が、ポケモンではドラゴンとされていることも多いようです。

 

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ジガルデのモチーフは、恐らく北欧神話の世界蛇「ヨルムンガンド」。ヨルムンガンドは3兄弟で、下から順に狼(フェンリル)、蛇、巨人(ヘル)です。それぞれ、ジガルデの10%フォルム、50%フォルム、100%フォルムのモチーフだと考えられます。

蛇と言えば、光沢ある鱗で覆われ、長い体を持ち、民話で神と崇められる生物です。これらの特徴は、竜とも共通するところ。そういう点から、ポケモンでも蛇をドラゴンタイプとする例が多いようです。

 

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似た理由から、サザンドラは神話の蛇であるヤマタノオロチがモチーフ。アーゴヨンは、"Naganadel"という英名なのですが、"Naga"(ナーガ)と言えば、インド神話の蛇神です。やはり、ポケモンでは蛇=ドラゴン、となるようです。

 

 

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ヌメルゴンは、カタツムリっぽいドラゴンという謎のモンスター。そのモチーフは、フランスに伝わる、カタツムリの殻を持った蛇の怪物「ル・カルコル」のようです。やはり、蛇の部分からドラゴンタイプが付けられたようです。

 

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チルタリスは、そのネーミング的に、幸せの青い鳥を追う少年「チルチル」+神話の鶏「コカトリス」が由来ではないかと思います。コカトリスは鶏の頭と蛇の尻尾を持った怪物で、蛇要素からドラゴンタイプとなっているのかもしれません。

 

パターン③:恐竜がモチーフ

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化石ポケモンであるガチゴラス、パッチラゴン、ウオノラゴンなどは恐竜を元にしたポケモンです。恐竜もドラゴンと呼んで問題ないだろうという事で、ドラゴンタイプ扱いされている様子です。

 

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オノノクスは、口元の左右に鋭い牙が突き出た恐竜「プラケリアス」をモチーフにしているようです。プラケリアスは、この牙を使って、草木の根を掘り返して食べていたとの事。オノノクスの斧の使い方と共通する所があります。

 

パターン④:現代の爬虫類がモチーフ

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メガジュカインは、進化前のキモリという名前からするに、ヤモリがモチーフのポケモンジャラランガは英名を"Kommo-o"と言いますが、"mo'o"とはハワイ語で「トカゲ」という意味。メガリザードンは、"lizard"なので同じくトカゲがモチーフでしょう。

西洋のドラゴンと言えば、もとは爬虫類から着想された生物です。ヤモリやトカゲといった爬虫類も、強ポケモンの風格を持たせるためにドラゴンタイプになる場合があるようです。

 

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クリムガンは、クリムゾン+ガン(顔)というネーミングからも分かる通り、赤い顔が特徴のポケモンです。同じく赤い顔が目立つ生物として、ユーラシア大陸に多く生息する爬虫類「アガマ」が挙げられます。恐らくクリムガンはアガマをモチーフとし、爬虫類繋がりでドラゴンタイプとなったのでしょう。

 

パターン⑤:言葉遊びでドラゴンタイプに

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本来のモチーフがドラゴンと何の関係もないポケモンでも、言葉遊びからドラゴンタイプとなるパターンも多いようです。

フライゴンは、ナックラー(アリジゴク)の進化系という事で、ウスバカゲロウがベースのポケモン。カゲロウは漢字で「蜻蛉」と書きますが、蜻蛉は「トンボ」という読み方もあります。そして、トンボは英語で"dragonfly"。という事で、ドラゴンタイプになってしまったようです。

同じく、ドラミドロはリーフィーシードラゴンがモチーフで、キングドラタツノオトシゴがモチーフのポケモン。竜と直接の関係はありませんが、名前の言葉遊びでドラゴンタイプとなった様子です。

 

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アップリューは、リンゴに巣食う虫のポケモン。虫を表す英単語は"bug"や"beatle"や"caterpillar"など色々ありますが、中でも虫食いを起こすような、細長く脚のない虫を"worm"と表現します。そして、"worm"と似た発音の単語に、"wyrm"があります。これは、細長く脚のない竜を表す英単語です。こういった連想から、単なる虫であるはずのアップリュー一族がドラゴンタイプとなったのでしょう。

 

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メガデンリュウは羊がモチーフで、どこがどうドラゴンやねん、と突っ込みたくなるポケモンです。

デンリュウの英名は"Ampharos"ですが、これは"ampere"(電流の単位)と"pharos"(灯台)が合わさってできています。日本語名も、「電流」をそのままカタカナにした物になっています。これが、何となく「電気の竜」っぽいネーミングに見えるため、ドラゴンタイプが付与されたのでしょう。

 

 

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アローラナッシーも、何がドラゴンなのか根拠不明なポケモンです。

姿形としてはドラセナに似ているようにも見えますが、ドラセナは別名を「血樹」。もしくは、単に首が長いことから、「首長竜」と掛けたのかもしれません。由来は不明ですが、何らかの連想ゲームでドラゴンタイプになっている気がします。

 

パターン⑥:飛行機モチーフならドラゴン

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ラティアスラティオスは、「イルカ」+「ジェット機」がモチーフのポケモンと言われています。イルカは超音波で仲間とコミュニケーションを取りますが、ラティアスも同様にテレパシーで人間と意思疎通する能力を持ち、これがエスパータイプとなった由来でしょう。加えて、ラティオスの図鑑説明には、「腕を折り畳むとジェット機よりも速く飛べる」とあります。空を神速で飛行する伝説の存在という点で、竜と共通する所があるため、ドラゴンタイプとなったのでは無いでしょうか。

 

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ガブリアスも、「サメ」+「戦闘機」がモチーフと言われています。軍用機の世界では、機体にサメの口のペイントを施す「シャークマウス」なる文化があるようです。ガブリアスの図鑑説明にも、「マッハで空を飛ぶ」という内容があり、飛ぶサメとしてデザインされたのでしょう。ゲームフリークは、ドラゴンポケモンに飛行機モチーフを取り込むのがお気に入りの様子です。

 

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ドラパルトは、「ディプロカウルス(絶滅生物)」+「ステルス航空機」がモチーフ。絶滅生物という点がゴーストタイプの由来となり、飛行機モチーフという点がドラゴンタイプの由来となったようです。「飛行機は速く飛ぶからドラゴン」というゲーフリの理論は納得感に欠けますが、飛行機のモチーフを取り入れるとポケモンのデザインが格好良くなるため、600族にはうってつけです。

 

まとめ

ドラゴンタイプのポケモンには、「正統派ドラゴン」「空想上の爬虫類」「恐竜」「現代の爬虫類」「言葉遊び」「飛行機」という、6種類のモチーフがあると考えられます。元ネタが一目瞭然なポケモンも居れば、マイナーな民話や慣習から着想したポケモンも居て、デザイナーの発想力の豊かさには脱帽です。その上、ドラゴンポケモンのデザインは、格好良くて個性溢れるものばかり。

第9世代では、どのような魅力的なドラゴンポケモンが登場するのか、今から期待感で一杯です。

 

余談:分類できなかったポケモンたち

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その他、調べている中で、なぜドラゴンタイプなのか根拠不明なポケモンも多く居ました。全体的に伝説のポケモンが多く、強ポケ感を出すために、強タイプのドラゴンに設定されたのではないでしょうか。

アクジキング(ブラックホールがモチーフ?)やウルトラネクロズマ(太陽と月がモチーフ?)は、宇宙を彷彿とさせるポケモン。「流星群」という技や、メガレックウザで宇宙に行くというエピソードから、「ドラゴンタイプ=宇宙」という要素も見え隠れします。

シンオウの伝説3匹は、連想ゲーム的にタイプが決まったのかと推察します。ディアルガは「金剛石」→「硬い」→「鋼」、パルキアは「真珠」→「水中にある」→「水」、ギラティナは「反物質」→「存在しない」→「ゴースト」という連想でタイプ1が決定。鋼・水・ゴーストとの複合が未出で、かつ伝説感あるタイプとして、ドラゴンが選ばれたのでしょう。

イッシュの伝説3匹も、エネルギー関連という事で、炎・電気・氷というタイプ1が決定したのでしょう。そして、同じく複合未出のタイプかつ、建国の英雄に相応しいタイプとして、ドラゴンが選ばれたのでしょう。

どのポケモンも、ドラゴンらしきモチーフとの関連を探ることはできませんでした。